[ ここから本文 ]
ビッグ・リバー(2004年10月に記したエッセイ)
定期便のように毎週末やってきた今年の台風。10月のその日曜日も東京はまだ雨がやまなかったが諏訪に近づくと急に青空が広がって、諏訪湖畔の式場はまさに結婚式日和。
ボランティア仲間の二人のお祝いに、私たち8名が駆けつけた。この結婚式では、祭壇の神父の横にもう一人立つ。神父の言葉を手話で伝えるために。
新婦はフランス人形のように美しい難聴の友人。駆けつけた仲間も半分は聴覚障がい者。手話通訳は当たり前の結婚式だった。披露宴ではお祝いに声楽家の友人が手話付きの歌を披露し、私たちも続いて手話コーラスを歌った。
手話通訳とはじめて同席した方や手話コーラスをはじめて聴いた(見た)方々も多かったようだが、みな大きな拍手で応えてくださった。
数日後、新郎から「親戚や他の友人達が手話にとっても興味を持ってくれて、手話を習いたいと言ってくれている」と嬉しいお礼のメールが届いた。
数週間後、「ビッグ・リバー」を観た。アメリカのデフ・ウエスト・シアターの公演でろう者と聴者が一緒に演じている大変レベルの高いミュージカルだ。
軽快なリズムと歌に合わせて舞台を駆けめぐるろう者の主人公は、聴者とのデュエットに動きがぴったりと合っている。どうしてわかるのだろうか?
ろう者の手話を語ったり歌ったりするもう一人の出演者を意外な形で登場させて楽しませてくれるその演出は、ろう者と聴者がまったく平等の条件で舞台を鑑賞できる上演形態を模索して行き着いたスタイルだという。
サイン・ランゲージ(手話)の美しさと力強さを舞台いっぱいに表現して、手話の表現力の高さと美しさにあらためて驚き、舞台に深く感動した。チケットは売り切れが出るほどで、公演は大成功だったのではないだろうか。
交通バリアフリー法が施行されてから、交通機関のアクセシビリティはかなり改善されてきた。車いすで一人で出かけることが、以前より楽になったと友人は言う。聞こえない友人は、駅や電車内の電光表示が多くなって嬉しいという。でも、ダイヤの乱れや緊急時の表示はまだまだと嘆く。
4日たったいまも余震が続いている中越地震では、見えない人や聞こえない人、車いすの人、寝たきりの人たちはどのように避難したのだろうか。避難所ではどうしているのだろう。
昨年の消防法の改正で、すべての新築住宅に火災報知器設置が義務づけられたが、聴覚障がい者に配慮して「光や振動で火災を知らせる方式」が加わったと、嬉しい知らせが届いた。
地域づくりを考えるとき、様々な特性を持つ人たちへの細やかな配慮を忘れないでほしい。その配慮から新たな発想が生まれたりもする。暮らしやすい活気ある地域づくりのポイントではないかと考えている。




