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「乗り換えを急ぐ女性たち」 (月刊総務の連載 2003年4月号)
“乗換駅の乗り換えに一番近い乗車口に乗り、ドアが開くと同時に走って次の電車の時間を電光掲示板で見、あと一分と走って乗り換え電車の降り口に一番近い車両に跳び乗り、ほっとして吊革につかまりながら今晩の夕食の献立を考える”こんな情景を想像したことありますか。多くの子育て中の女性の帰宅風景と心情です。
子どもが小さいころ、夕方いつものように走っていて、ふと気づいて周りを見ると、走っているのは女性ばかりでした。私はいまでも乗り換えを急ぐ習慣が治らず、いくつになってもバタバタと走っている自分に苦笑することがしばしばあります。
最近は東京の地下鉄などのホームに、どの車両に乗れば改札に近いかを表示した案内があります。聞くところによると、その案内表示を売り込んだのは子育て中の主婦だということです。不便さを実感しているからこそ浮かんだ着眼点であり、アイデアでしょう。あの表示は実に便利で、発案者に感謝したい気持ちです。
問題意識をもつには常識を疑う感性が必要
「この変革の時代にあっては、常に問題意識をもって業務を推進していくことが必要条件です」「問題意識をもって、いままでにないことを考え、新たな発想で商品やサービスを生み出さないと企業の未来はありません」。
こうした言葉がいま当たり前のこととして言われ、受けとられています。そしてまた、「問題には『発生型の問題、発見型の問題、発掘型の問題』があり、リーダーは時代を先見して発掘型の問題を課題と捉えて解決していかなければならない」とも言われています。 発掘型問題とは、「いまはこのままでも問題はないが(上手くいっているが)、時代の先を考えて市場の変化を予測し、問題(課題)と捉え変革していかなければ、いずれ大きな問題になる」問題をいいます。あることを「いずれ大きな問題になる」ような問題だと気づくには、“なぜ?どうして?”という常識に疑問をもつ感性が重要になってきます。
また、「こんなものがあったらもっと便利なのに」「どうしてこんなに使いにくいのだろう」などと商品やサービスに不満を言う“わががまな感性”が、新たな問題提起や開発には大切です。
問題の所在を“照射”してみる
元気で若い男性中心の社会が当たり前だったころは、女性や高齢者、さらに障がい者が“わがままな感性”を発揮して“もの申す”と「だから女性は!」などと非難されることが多かったのです。しかし、プリペイドカードの切り欠きやシャンプーのきざみに代表されるユニバーサルデザイン商品がヒット商品になるように、見えない人の便利さを考えて開発された商品が、実は元気で若い人にもたいへん便利なものであった、という例はたくさんあります。実際にはみんな不便さを我慢して使っている商品やサービスは一杯あるということに気づくことが、本来の顧客満足追求になるはずです。
そうした観点に気づく感性は、さまざまな特性をもった人の生活習慣や不便さを理解することから見えてきます。「社会の常識なんだ」「当たり前のことだろう」と決めつけないで、その当たり前のことを“なぜ”と疑って問題として“照射”してみると新たな発想の商品やサービス、企業のシステムが生み出せると思います。
ノーマライゼーションやジェンダー・フリーへの価値観の転換は、いままで当然と思っていたことに疑問をもって問題の所在を違った角度から“照射”する習慣をもつことによって身についていくのではないでしょうか。
「女性は家庭のことをきちんとこなしてから仕事に出るべきだと思う」 なぜ?




